吉野弘氏のI was born.の詩が彫られたプレートは、ここ数年来酒田商業の職員玄関に飾ってあったが、今度は光陵高校に移ることになる。この詩は、自分の意思ではなく生まれさせられた自分が、やがて自分の責任で人生を生きてゆくことの大切さを訴えたものだと思う。昔、この詩にまつわる話やら何やらを、スプーンで何度か対談として載せていたものを一冊の本にしたのが「風の記憶」。この本には昔の酒田がたっぷりと紹介されている。
昨年、近所の新古書店(つまりブックオフ)で吉野弘の『贈るうた』を見つけ購入したのですが、なんと105円という値段でした。本の価値など分からぬ人が値を付けることに少しの怒りを感じつつも、掘り出し物とばかりにほくそ笑む小市民的なもうひとりの私がいます。『贈るうた』には「I was born」の他「祝婚歌」「生命は」などの代表的な詩が掲載されています。読んでから21歳の娘にあげたのですが「ふ〜ん」といったきり未だ読んだ形跡はないようです。いつの日か心の琴線に触れればそれでよしと思っています。
ところで先週、山田太一脚本のドラマ『キルトの家』を観ていたら、山崎努が三浦貴大に「『魂のはなしをしよう』と云ったのは俺が考えたセリフではなく、吉野弘の詩にあるフレーズなんだ」と話していた。酒田出身の詩人・吉野弘は、谷川俊太郎や茨木のり子と並ぶ現代の代表的詩人のひとり。今回のドラマのように、いろんなところで吉野弘の名前が出てくるたびに気になってしまう。だから古本屋で吉野弘に関した本と出合えばなるべく買うようにしてきた。初めて吉野弘の詩と対峙したのが「I was born」という詩。生まれるって受動態だったという発見、父の話、カゲロウの短いイノチ、そして亡くなった母のこと。それぞれの言葉の断片が深く心に降りてくる、これは傑作だと思った。